海外におけるDXのいま──欧米・中国に見るデジタル技術の普及度

働き方改革やコロナ禍をきっかけに日本国内の企業ではDXの推進が進んでいます。ただし、その進み具合は企業の体質によって大きく異なるでしょう。デジタル技術を活用してフルリモートで組織運営を行う企業もあれば、膨大な紙の資料をファイル棚に並べている企業も存在します。

実際のところ、日本全体としてDXはどの程度進んでいるのでしょうか? 国としての立ち位置を知るためにも、より効果的にDXを推進するためにも、まずは世界のスタンダードを押さえておきたいところです。

この記事では、ヨーロッパ、アメリカ、中国の最新状況をご紹介します。

目次

ヨーロッパのDX事情──デジタル市場でのシェア獲得が課題

欧州連合(EU)の中でも、国によってDX推進の度合いは異なります。イギリス・ドイツでは比較的デジタル技術の普及が進んでおり、フランスがその後を追う形です。ただし、この後に紹介する中国やアメリカと比べると、EU全体としてはまだまだ発展途上で、イギリス・ドイツでさえ地域によってはインターネット回線が不安定という現状があります。

EU全体の動向としては、2015年頃よりDX推進に注力しています。EUのデジタル市場はアメリカ・中国に大きく依存しており、ECサイトやクラウドインフラなどのオンラインサービスについていうと、シェアの52パーセントを米国企業が占めているのが現状です。つまり、オンラインサービスの利用を通じて取得できるデータを、EU外である米国企業が保有しているという状況なのです。それにより、EU主導でデータ活用を進めることの障壁となってしまっています。

そこで、デジタル市場におけるEU企業の競争力を強化するために、EUは区域内の市場を統合する方針を打ち立て、規制を取り払うことで加盟国間におけるデータの流通を促進。例えば、同じEU域内であっても、以前は自国で契約したオンラインコンテンツに他国からアクセスできないケースがありましたが、越境アクセスの規制やローミング料金を撤廃することで自由に利用できるようになりました。

EUに限らず、国や地域主導でDXを推進するにあたって、いかにオンラインサービスのシェアを獲得し、有用なデータを収集するかが今後の鍵となるでしょう。

中国のDX事情──公益のためにビッグデータを活用

中国は政府主導で収集したビッグデータを公共に役立てているのが大きな特徴です。例えば、IoTと顔認証技術をかけ合わせた監視カメラや、大手通信会社からの情報提供等を通じて、人々の個人情報や行動履歴を収集し、犯罪抑止や消防活動などに活用しています。消防活動の例でいうと、人々の住所や家族構成に加え、交通状況を素早く把握し、消防設備や人員を手配することで迅速な救助に役立てているそうです。

昨今のコロナ禍では、決済アプリ経由で体調等に関するアンケートを実施し、その結果と行動履歴をベースに感染リスクの高い地域を特定。感染拡大を最小限に抑えることに成功しました。

世界基準で見てもデジタル先進国の中国。ただし、多くのDX施策は政府主導で行われており、施策を通じて取得したデータは政府に集約されている点に疑問が残ります。その最たる例がキャッシュレス化です。中国で電子マネーの流通が一気に加速したのは、偽札の横行により貨幣の価値が暴落することを防ぐのが一番の理由ですが、それに加え、政府が人々の購買行動を簡単に把握し、管理するためであったともされています。

中国が持つデジタル技術自体は有用ですが、日本で取り入れるのであれば、特にプライバシーの観点で議論の余地があるといえます。

アメリカのDX事情──産業によってデジタル利用率に偏りが

AmazonやMicrosoft、Googleなど、クラウドサービス業界において圧倒的シェアを誇るアメリカ。DX先進国のイメージが強いですが、実際には、州や産業ごとに大きく差があります。地方分権の考えが根付いているアメリカでは、州政府の方針によりDX推進の度合いは異なり、例えば、手続きや予約といった生活に密着したシステム、データ分析やインフラなどのツールの利用率にも違いがあるようです。

産業に注目すると、最もDXが進んでいるのはIT業界。次いで、金融業界やシェアリング・エコノミーサービス業界です。経営戦略の策定においてビッグデータをフル活用しています。例えば、日本国内でも飲食の宅配サービスで有名なUber(ウーバー)。ライドシェアサービスにおいては乗車履歴を中心とした膨大な量のデータをAIにより分析し、利用者の属性や、それに紐付く行動パターンなどの情報を元にサービスの利便性向上を図っています。

一方で、労働集約型の産業においてはDXが進んでいない領域も多く、特に建設業や農業など地域と密接に紐付いた産業ではデジタル利用率が低い傾向にあります。これはアメリカに限らず、日本を含む各国でも同様のことがいえるのではないでしょうか。

各国のモデルケースになり得るアメリカだからこそ、このような領域において、どのようにDXを推進していくのか今後も注目したいところです。

さいごに

この記事で紹介した海外の事情は、日本国内でDXを進めるうえで一つの参考になるのではないでしょうか。

国としていかにDXを進めてきたかという観点を多く取り上げましたが、企業としてDXを推進する場合においても、特にCSRの立場からどのように国や地域と連携するかの検討材料になります。

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